薬剤性腎障害診療ガイドラインから、PMS活動の重要性を知る

「薬剤性腎障害診療ガイドラインを読み解く」をまとめました。 更新日: 2017年03月6日

土日はラクロスの練習で朝5時台から外に出る機会の多いわたしですが、最近は日が昇るのが早くなったと感じます。あっという間にお花見シーズンが到来しそうです。

さて、今回は「薬剤性腎障害診療ガイドラインを読み解く」という教材を紹介させていただきます。
超高齢社会の現代日本、CKD(慢性腎臓病)患者は1300万人を超えるとされています。また、今後も患者数の増加が見込まれています。
そうした中で、2016年に日本腎臓学会によって「薬剤性腎障害診療ガイドライン」が公開されました。このガイドライン作成の大きな背景の一つには、CKD対策があるとされています。
CKD対策と薬剤性腎障害ってそんなに密接な関係にあるの?
MRは何をしたらいいの?
そんな疑問に答えるきっかけが見つかれば幸いです。

ガイドライン作成の背景

高齢者では一般的に加齢に伴い腎機能が低下するため、年齢が高くなるほどCKD患者頻度が高くなります。人口の高齢化により、CKD患者は今後も増加すると見込まれています。 CKDが腎不全による透析患者の増加と、心血管疾患による死亡率の上昇と関係していることはよく知られています。慢性透析患者の医療費の問題も絡み、CKDの進行を抑制し腎不全の発生を減らすことは、国民の健康と健全な医療経済を維持する上で重要な課題なのです。 CKD対策には多方面から様々なアプローチが示されていますが、薬剤性腎障害(drug-induced kidney injury:DKI)対策もそのひとつです。

    ▼用語解説
  • CKD対策:生活指導・食事指導・血圧管理・糖尿病患者の管理・脂質管理等、さまざまな治療法を組み合わせた集学的治療を要する。

長寿大国だからこそCKD患者も多い日本。世界最高の健康立国を目指すためにも、医療費という現実的な問題もあり、CKD対策については色々な手を打つ必要があるのですね。 素人考えかもしれませんが、『薬剤性』腎障害というくらいなので、MRさんだからこそできることがたくさんありそうです。

薬剤性腎障害とCKDの関係

多くのCKD患者は腎障害に加えて複数の合併症をもっていますが、多くの薬剤は腎排泄性または腎障害性であるため、CKD患者へは腎機能に応じて投与量や投与間隔を調整する必要があり、腎障害や合併症について十分に治療できないケースがあります。 そして、DKIガイドラインは、統計的なエビデンスはないと前置きした上で、多くの腎臓専門医が薬剤性腎障害がCKD患者の腎不全への進行を早めるという臨床上の感覚を持っていることを示唆しています。そもそも、薬剤性腎障害はCKDの原因としても重要です。 しかし、DKIガイドラインが発表されるまで、薬剤性腎障害を系統立てて定義し、早期診断と対策について広く日常診療に利用できるものは存在していませんでした。 DKIガイドラインは腎臓専門医以外の活用も意識した構成になっていますが、現実的には、腎臓専門医であっても、多剤服用が常態化している高齢者では、薬剤性腎障害を正確に診断するために非専門分野への知識が必要となり、診断は容易ではありません。 今後、進展する高齢化に比例するように、MRが持つ薬剤性腎障害に関する医薬品情報が、CKD対策として臨床現場で大きな価値を持っていくことになります。薬剤性腎障害の原因薬剤を把握し正確に診断できるかかりつけ医が増えてくるかどうかは、これからのMRのPMS活動にかかっているといえるでしょう。

多くの薬剤が腎排泄性もしくは腎障害性であるために、合併症に対する治療が十分に行えないという事態は、医師にとっては大きなジレンマとなっていそうですね。医師が患者さんへの負担も考えながら最大限の治療効果をあげるためには、MRの提供する医薬品情報が鍵を握るといっても過言ではないようです。

原因薬剤の特定は難しい

DKIガイドラインが示す診断基準では、
1)該当する薬剤の投与後に新たに発生した腎障害であること、
2)該当薬剤の中止により腎障害の消失、進行の停止を認めること、
これら2点を同時に満たし、かつ他の原因が否定できる場合に薬剤性腎障害と診断できるとされています。 しかし、DKIガイドラインは、スライドに示した丸数字1〜4のように薬剤性腎障害の診断ならびに原因薬剤の特定がしばしば困難となる問題点も指摘しています。

薬剤性腎障害の診断基準のみを見れば、専門医であれば診断は容易にも見えます。しかし現実は、薬剤性腎障害の診断ならびに原因薬剤の特定に関する問題点からもわかるように、診断と原因薬剤の特定が困難である場合が多いようです。高齢者の多くは、多剤服用となっているため、上記の問題点に該当する場面は非常に多いのではないでしょうか。原因薬剤の特定においては医薬品の情報提供を行うMRと医師の協力が不可欠なように思えます。

これからの薬剤性腎障害診療ガイドライン

2017年2月現在、日本腎臓学会が公開している資料から確認できる情報では、日本腎臓学会認定の腎臓専門医は4,511名、腎臓専門医が常駐する医療機関数は2,400余りです。また、日本腎臓病薬物療法学会が認定する腎臓病薬物療法専門薬剤師が16名、腎臓病薬物療法認定薬剤師が101名になっています。こうした現状から推測するに、DKIガイドラインが示す知見が専門医以外へと広がっていくにはもう少し時間がかかりそうです。 今後、DKIガイドラインが専門医だけでなく内科系や外科系の医師にとっても分かりやすく利用しやすいものになっているかどうか、実際の診療現場でどのくらい実践され、診療の向上に寄与しているのかを、医療の質を評価するQuality Indicator(QI)指標を元に、その実施・遵守状況の評価が行われます。その評価結果や新たに得られたエビデンスを反映させ、およそ3〜5 年後を目安として改訂される予定です。

    ▼用語解説
  • Quality Indicator(QI)指標:標準的な診療がどの程度行われているかを、その実施率でスコア化するもの。QIの実施率 = 標準診療が行われた患者さんの数/標準診療の対象となる患者さんの数。

薬剤性腎障害診療ガイドラインにまとめられた適正使用情報の多くは、MRさんによって提供されたものであると推測されます。こうした情報収集の成果が今回のガイドラインにつながっているのだと言えそうです。 ガイドラインも作りっぱなしにするのではなく、医薬品と同様にかかわる人々によって育てることで、より多くの診療現場で用いられる指針となっていくのですね。

今回のまとめ

MRさんにとって最重要業務のひとつPMS活動。薬剤性腎障害診療ガイドラインは、各社のMRさんの地道な情報提供活動があってこそ成り立ちうるものだったのだということが分かりました。と、同時に、薬剤性腎障害の対策にはMRさんの情報提供が必要不可欠であるということも強く感じました。 重要な業務と言われながら、なかなか成果が見えないPMS活動かもしれませんが、この教材を通して改めてPMS活動の重要性や意義について考えることが、医師との関わり方のヒントになるかもしれません。 最後に、パワーポイント教材と連動する本誌「Medical Education for MR 春号」より、編集部作成の「原因薬剤逆引き薬剤性腎障害一覧表」を紹介します。 自社薬剤と薬剤性腎障害の関係をチェックしてみてください。

Medical Education for MR 2017年春号 2017年3月10日発売より

author:水谷菫
メディカルエデュケーション(editor+)。
東京・青稜高校出身。早稲田大学スポーツ科学部卒。趣味はラクロス。就職活動時代はMRかSEかという2択で迷った元SE。現在、医療・介護・ヘルスケア部門を勉強中です。

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