医師に寄り添えるMRを目指すあなたへ―医師が直面している現状を知る

「医師の職業倫理指針から考えるMRの行動」をまとめました。 更新日: 2017年03月10日

最近観た映画の影響でシナモンロールを作ったところ、家じゅうが凄まじい香りで包まれました。何事も適量が一番ですね。

一般に、MRは「高い倫理観が求められる職業」と言われています。それ以上に医師は日々、倫理的課題と向き合っています。
エシカルという言葉が流行りだして、エシカル(倫理的)=環境保全や社会貢献というとらえ方が広まってきているようですが、医師やMRの倫理とはまったく次元が違う気がしています。
ただ、医療のICT化や進歩により、求められる倫理観も年々変化していきます。「医師の職業倫理指針」は2016年10月に8年ぶりの改訂となりました。この改訂の背景を知ることで、医療の『今まで』と『これから』が見えてくるのではないでしょうか。
そして何よりも、医師のパートナーとして、担当の先生がどのような倫理指針で業務にあたっているのかを知っておくことで、課題を共有できるヒントが見つかるかもしれません。

今回は「医師の職業倫理指針から考えるMRの行動」という教材を、私の感想とともにご紹介します。

医師が日常診療で対応すべき倫理的課題

医師の職業倫理指針は、急速な医学・医療の進歩、社会状況の変化に対応する形で見直されてきました。 表に示したように、医師が日常診療で対応すべき倫理的課題は膨大で、現代の医師がいかに多くの事柄に縛られているかを知ることができます。 今回の改訂で新たに指針に加わった内容に注目すると、現在進められている地域包括ケアシステムを踏まえた対応、個人情報保護法の要配慮個人情報への対応、遺伝子をめぐる課題への対応、ICTの進展への対応、臨床研究に係わる利益相反など、まさにこの8年間における医師が対応すべき社会状況の変化を反映したものになっています。

    ▼用語解説
  • 要配慮個人情報:2015年9月の改正個人情報保護法で定義された慎重な取り扱いを要する個人情報。

医師の皆さんは日々、こんなにも多くの倫理的課題を抱えながら業務にあたっているのですね。 そして指針に新たに加わった内容の背景には、医療の進歩や医療の『今』に関わる出来事が深く関係しているのだということを実感しました。 倫理指針に限らず、ガイドラインなどの改定内容を細かく見ていけば、それに関連する事柄が、どのような方向に進むのか見えてくるという、よい例に思えます。

事実上解禁された「遠隔診療」

しかし、2015年8月、厚生労働省医政局長通知によって遠隔診療の解釈が明確化され、直接の対面診療を行うことが困難な離島・へき地医療以外にも「患者側の要請に基づき、患者側の利点を十分に勘案した上で、直接の対面診療と適切に組み合わせるときは、遠隔診療を行っても差し支えないこと」が示されました。 厚生労働省の通知はソフト・ローですが、これが「事実上の遠隔診療の解禁」と受け止められ、最近では都市部でも生活習慣病や禁煙の外来などで遠隔診療を行う医療機関が登場しています。

今まで、医師法というハード・ローで「無診察治療等の禁止」が決められていましたが、近年のICTの発達に伴い、遠隔診療が事実上解禁となったそうです。 これも、時代の流れとともに医療のカタチが変化している証であるといえますね。しかし、遠隔診療のみとなることで、患者さんの身体に思わぬ被害が及ぶことも懸念されています。患者さんのためになると遠隔診療を行うはずが、招かざる結果を生み出すことにもなりかねないという難しさの中に、医師は立たされているようです。

リスクを抱えながら終末医療に携わる医師たち

医師の職業倫理指針は、川崎協同病院事件の最高裁判決を受け、逆説的に「患者の病気が不治で死期が近いこと、本人の意思が認められれば許容できることを認めていることになる」と指摘しています。 終末期患者における安楽死・尊厳死を許容するハード・ローはなく、医師は刑法による殺人罪で裁かれるリスクを抱えながら、延命治療の差し控えや中止を考慮しなければなりません。医師の職業倫理指針の指摘は、職業団体として医師のジレンマを代弁するものと言えるでしょう。 いずれにせよ、終末期医療における治療行為の差し控えや中止とその手続きについては、医療倫理的にも、法的にも依然不明確な状態が続いています。

終末医療と切っても切り離せない、安楽死・尊厳死のテーマは医師のジレンマを引き起こす、大きな課題であると言えそうです。家族からの要望があってもなお、医師が延命治療の差し控えや中止を決断することで罪に問われるという現状は、今後どのように変わっていくのでしょうか。 医療技術の発展が著しい現代だからこそ、表出した問題ですね。これまでも長い検討が続いてきたようですが、今後、法的な整備が一気にすすめばいいな、と個人的には感じました。このようなところからも、医療の『今まで』と『これから』を垣間見ることができました。

医師の職業倫理指針にMRという言葉は出てこない

医師の職業倫理指針の中に「製薬会社」という言葉が出てくるのは、上記引用部分の一か所のみです。「MR」という言葉は直接は出てきませんが、この項目が医師とMRとの関係を示していることは言うまでもないでしょう。 改定前(第2版)の同じ項目をみるとこう書かれています。 「業者との取り引きは適正なものでなくてはならず、特に医薬品や医療資材代金の支払いに関する不適正な対応は医師の信用をおとしめる行為であり、避けなければならない。」 このように、改定前はあくまで医薬品や医療資材代金の不適正な支払いをけん制する内容に過ぎませんでしたが、今回の改訂では、「研究結果や診療結果に対する不信を生みかねず、絶対に避けなければならない」と非常に強い表現に変化しています。 この変化の背景として、2013年から2015年にかけて相次いだ臨床研究に関する不適正な事案が影響していることは間違いないでしょう。

臨床研究に関する不適正な事案が相次いで判明したことにより、医療界全体の信頼が低下したということは事実でしょう。そういった状況の中で、この指針では医師たちに再度、医療に関わる者としての在り方を強く示しています。医療界の信頼回復を図るには、医師とMRが協調して事に当たることが、求められるのではないでしょうか。

今回のまとめ

医師は毎日多くの患者さんと向き合い、その都度あらゆる視点での「倫理的な判断」を求められているのだということがよく分かりました。医師とMRとの関りに注目すると、臨床研究と利益相反の話題に落ち着きます。信頼回復に向け、MR一人ひとりの倫理観を持った行動が、大切なんだなと感じました。 今回、私個人も医師が則るべき倫理指針を知ったことで、医師の知りたがっている情報ニーズが見えてきたような気がします。次回も、勉強します。

author:水谷菫
メディカルエデュケーション(editor+)。
東京・青稜高校出身。早稲田大学スポーツ科学部卒。趣味はラクロス。就職活動時代はMRかSEかという2択で迷った元SE。現在、医療・介護・ヘルスケア部門を勉強中です。

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