その薬、本当に必要?−医師の高齢者への処方をサポートできるMRになる

「ポリファーマシーの問題点と対応策」をまとめました。 更新日: 2017年7月27日

会う人会う人に、焼けたね、と言われます。毎日の通勤電車でも、つり革を掴む隣の女性との肌の色の差に愕然とする日々です。

先日、新聞を読んでいたところ、IPadと連動して服薬管理を行うリアルな「薬箱」が開発されたという記事を見かけました。患者さんと処方薬とを個別に紐づけたICタグ薬包を一括読み取りで管理できる機能を持った薬箱とのことですが、医療分野でのIoTテクノロジの活用は今後もどんどん増えていくのだろうと思います。
そして何よりも、このような開発が進められるということは、裏を返せばそのニーズがあるということです。今回は、服薬管理にも深く関わりのあるポリファーマシーについて学んでいきたいと思います。

何剤からがポリファーマシーか?

しかし、ポリファーマシーの定義は一元的ではありません。 スライドに示した調査によると、薬物有害事象の発生頻度は6剤以上から上昇していますが、転倒の発生頻度は5剤以上から急上昇しています。 現在、何剤投与されたらポリファーマシーとなるのか、世界的に見ても明確にはされていません。単に薬剤数の多寡から論じるのではなく、「有害事象を増やしてしまう薬剤数」が問題の本質であることを理解する必要があります。 また、「必要以上に」たくさんの薬剤が処方されている状態も該当するとして、重複処方や適応外使用などもポリファーマシーに含めるという意見もあります。患者への不利益が「ない」あるいは「少ない」ポリファーマシーであるのか、不適切なポリファーマシーであるのか、臨床では冷静な判断が求められます。

2017年7月20日に日本老年医学会から発表された「高齢者高血圧診療ガイドライン2017」の中でも、降圧薬の併用療法において薬剤数の上限はありませんが、一般に高齢者では降圧薬に限らず5〜6 剤以上を多剤併用(ポリファーマシー)の目安として注意するということが推奨されていました。 薬剤数は目安であり、あくまでも、「有害事象を増やしてしまう薬剤数」が問題である、ということがポリファーマシーの本質なのですね。ポリファーマシーだからと言って一概に問題があるとも言えないのが難しいところですね。

標準治療に従っても生じるポリファーマシー

ポリファーマシーに陥りやすい理由のひとつに、ガイドラインの存在があります。 「高血圧治療ガイドライン2014」(JSH2014)によると、生活習慣の改善を行いながら原疾患の高血圧症治療のための薬剤が処方され、降圧が不十分であれば、薬剤を追加することが推奨されています。 薬剤が追加投与されるのは治療ステップに沿った経過で、いわばガイドラインに基づいた「標準治療」なのです。疾患ガイドラインに沿った薬剤選択、薬剤数、投与量でも、他の疾患、例えば糖尿病を併発している場合はこれにさらに各種の糖尿病診療・治療ガイドに基づいた薬剤投与が行われるため、必然的にポリファーマシーになります。 医療者側は、EBMに基づいた治療を提供したとしても、患者に予期しない結果をもたらす危険性を常に意識しなければならず、「病気」を単位とした投薬とは違う別の視点が求められます。

    ▼用語解説
  • EBM:Evidence-based Medicineの略であり、「科学的根拠に基づく医療」と訳される。(MRテキスト?医薬品情報2012 2015年改訂より)
多くの疾患を併発すればするだけ、ポリファーマシーとなる可能性が高まるのですね。「標準治療」に則った処方を行っても、危険が生じかねないということは、常に頭に入れておくべきことなのだと感じます。

服薬アドヒアランスの低下による懸念

1日当たりの服薬回数や服薬する薬剤数が多いほど、薬剤が正しく服用されにくくなる、つまり服薬アドヒアランスが低下することもわかってきました。 服薬アドヒアランスの低下は、原疾患の治療にも影響します。患者本人としては薬を服用しているのに症状が改善されないという不満を抱き、受診を重ね、さらに薬を処方されるという負のスパイラルに陥りかねません。これは医療者としては絶対に避けたい状況です。

服薬アドヒアランスの低下だけでなく、ポリファーマシーの背景には、医薬品の組み合わせによる健康被害や医療保険財政の圧迫、一人暮らしの高齢者数の増加などさまざまな課題があります。こうした現状に対応するべく、冒頭で紹介したような「薬箱」のような開発が進められているのだということがよく分かりました。 しかし、処方された数多くの薬剤をどう管理するのか、の前に、服薬数を減らすためにどのようなことができるのかを検討していく必要がありそうです。

投薬に伴うリスクとベネフィット

高齢者にとって、有害事象の発現だけでなく、1日3回などの服用回数を守ることも薬剤投与に伴う負担となります。さらに、処方される薬剤数が増えることにより薬剤費負担が大きくなる問題もあります。 そうした負担と、効果の大きさ、確実性などを比較して、ベネフィットがリスクを上回るような投薬でなければなりません。 高齢者への薬剤投与にはこうした配慮も必要です。

医師は様々な側面の問題を考慮しながら、薬を処方しているのですね。そのためにMRができることは、やはり市販後調査の情報などを迅速に医師に伝えることや、時には処方に関する相談に乗ることなのではないかと思います。

今回のまとめ

日本では現在、高齢化社会や医療費の増大に関する様々な懸念がありますが、ポリファーマシーはまさに高齢者や医療費に深くかかわる問題だということがよく分かりました。課題解決のためのイノベーションが期待される部分でもありそうですが、やはり、その前には人間としてのコミュニケーションが大事なのではと思います。医師だけではなく様々な立場の医療関係者が協力していくことが必要であるのだと感じました。

author:水谷菫
メディカルエデュケーション(editor+)。
東京・青稜高校出身。早稲田大学スポーツ科学部卒。趣味はラクロス。就職活動時代はMRかSEかという2択で迷った元SE。現在、医療・介護・ヘルスケア部門を勉強中です。

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